At the Triangle Intersection


ドキュメンタリー映画「三角屋の交差点で」

監督:山田 徹/2025年/97分

東日本大震災と福島第一原発事故から6年。渡部家は、故郷・浪江町に戻るか、新たな土地で生き直すかという選択を迫られていた。震災を機に印刷業を手放し、現在は被災者向けの災害公営住宅で暮らすなか、それぞれが喪失と向き合い続けている。

At the Triangle Intersection

Director:Toru Yamada / 2025 / 97 min.

A couple and the husband’s mother have been living away from the town of Namie in Fukushima Prefecture since they were evacuated after the nuclear accident. As they make the decision to build a new house, their feelings as husband and wife, parent and child, and daughter-in-law and mother-in-law intersect. The film depicts their emotional struggle to live as their true selves, amidst elderly caregiving of the elderly and complex family relationships—issues brought to the surface by the disaster.

©Toru Yamada / IMPLEO Inc.

Story


東日本大震災と福島第一原発事故から6年。渡部家は、故郷・浪江町に戻るか、新たな土地で生き直すかという選択を迫られていた。震災を機に印刷業を手放し、現在は被災者向けの災害公営住宅で暮らすなか、それぞれが喪失と向き合い続けている。

99歳のテツは、記憶が薄れゆく中でも、原発の立地する大熊町の生家への想いを抱き続けている。寡黙な息子・武政は母を敬いながらも、介護の多くを「嫁の勤め」として受け止める妻・茂子に委ねている。茂子はその役割を果たしつつ、震災を契機に、家族や自身との関係を静かに問い直し始めていた。

変わりゆく暮らしの中でそれぞれが模索する「家」のかたちを見つめ、災害後の再生と変化の過程を静かに描き出す。

Director's profile


山田 徹(やまだとおる)

山田 徹(やまだとおる)

フィルムメーカー。岩波映画出身で女性映画監督のパイオニアである羽田澄子監督に師事。原発事故が発生した2011年3月以降、福島をフィールドに映像制作を行なっている。監督作に『新地町の漁師たち』(2016/第3回グリーンイメージ国際環境映像祭グランプリ)、『あいまいな喪失』(オムニバス映画『10年後のまなざし』の1本/2021/山形国際ドキュメンタリー映画祭ともにあるCinema with Us 2021)がある。

監督からのコメント


福島の原発事故で故郷を離れざるを得なかった高齢家族を、3年にわたり撮影するなかで、私は日本の地方に根強く残る封建制と、「嫁」という立場に課せられた無意識のケア労働の重みに向き合うことになりました。

災害は単なる外的被害だけでなく、家族内に潜む構造的な不均衡や社会的役割の脆さをあらわにします。 かつて家を仕切ってきた姑・テツ。家業を継ぎ、家長としての立場を背負ってきた息子・武政。そして「嫁の勤め」として沈黙を受け入れてきた茂子。それぞれが、喪失とともに役割を手放し、立ち尽くすなかで、どんな言葉を語り、あるいは語らないのか。

私はその沈黙の背後にある感情や関係性の継承に、カメラを向けました。

この映画は、老いとケア、役割の喪失と再構築という普遍的なテーマを、3人の静かな避難生活を通して描く試みです。変わりゆく社会のなかで、自分をどう選び直して生きていくのか。その問いに耳を澄ませるように、私は撮り続けました。

劇場情報


2026年4月上旬よりポレポレ東中野ほか劇場公開予定

配給・お問い合わせ


株式会社インプレオ IMPLEO Inc.